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 営業するためには登録外務員という資格をとらなくてはならない。そのための勉強が毎日あった。しかし、正直大して難しい試験ではなく、わかりきったことを何とも毎日反復するのにたちまち飽きた。その一方で、ソフトボールの試合をこれまた毎日やり、負けるとグラウンド10周させられたりした。一体、ソフトボールと商品取引と、何の関係があるのかと思う。要するに、やみくもな根性論と、とにかくバカげたことでも上の言うことを聞くように洗脳するための無意味なシゴキ、としか思えなかった。  バカになれ、としきりと訓練員は繰り返した。訓練員といっても、一年前に入社した、まだ新人に近い社員たちで、これが本物の新人が何か問題を起こしたりあまり教えたことが身についていなかったりすると、たちまち上から雷が落ちる。その分、ますますこっちの管理はきつくなる。バカになれと言われなくても、いちいち物を考えていたらやっていられなかった。  何かというと、大声を出した。「俺はーっ、どこそこの、なんとかだーっ」と名乗ってから、一日の目標、遠い目標を絶叫する。同じものを何度も使えるわけではないので、いちいち考えなくてはならず、いちいちでっちあげるのに苦労した。   研修を終わり、仕事が始まった。まず、テレコール。電話帳や名簿をごっそり集めてきて、片端から電話をかけてまわる。中には、どこから持って来たんだと思うような名簿もたくさんあった。  商品取引とは、簡単にいえば相場のことだった。株の代わりに小豆(あずき、ではなく専門用語でしょうず、と読んだ)や大豆の相場の上下を見越して売買して利鞘を稼ぐ。正確にいうと、客に利鞘が稼げますといって勧誘し、手数料を稼ぐ。     
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