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 合格すると同時に、自分の名前を名乗れるようになる。それで楽になるかというと、ひたすら電話口に向かって自分の名前を繰り返していると、名前が意味のない音の連なり、記号になってしまい、これまた一種の洗脳であることに変わりはない。  また、毎日営業日記をつけることが義務づけられていた。だが、一日中ただ電話をかけ続けていて何の成果もないのに、何を書けというのか。うんうんいいながら、なんとかもっともらしい“成果”や明日につながる反省の弁をでっちあげたりする。管轄官庁のお達しらしいが、これまた管理してますよというアリバイ作りとしか思えず、手間暇そのもの以上に徒労感にさいまなされた。  さらに、何の意味もないのに先輩が残っているからという理由だけで定時に帰るのがはばかられた。ただ残ったところで成果が上がるわけもなく、時間をムダにする焦りから、ますます時間がおそろしく長く感じられるようになった。  やっと解放されると、とりあえず一杯やり、こわばった頭を少しでもほぐすのが習慣になった。脳が麻痺すると、一転して時間の流れがおそろしく早くなる。そのわずかな自由時間をむさぼるように、さらにアルコールを喉に流し込んだ。眠る時間も惜しんで飲んだ。  そんなことを繰り返しているうちに、突然会社で倒れた。単なる寝不足だったのか、二日酔いだったのか、体が仕事や会社を拒絶したのか、よくわからない。     
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