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 とにかく、いきなりぶっ倒れたもので周囲も驚いて、近所の病院に担ぎこまれた。気がついてから医者の診察を受けたが、どこも悪くないというので、歩いて会社に帰った。  今、思い出したのだが、あれは仮病だったのではないか。自分でやっておいて“ではないか”というのもおかしな話だが、どうしてもテレコールが続けられなくて、最後の手段として病気のふりをしたような気がする。そんなことをすること自体、普通ではないので広い意味の病気だったとはいえるだろう。  とはいえ、倒れたというので一時的に「能力開発室」という人事部の一部という位置付けの部署に移された。そこで何をするかというと、何もすることはなかった。一日中机にしがみついて、新聞の切り抜きをするか、取引についての自習するか。本棚にはまとまった数の資料があった。アメリカの穀物メジャーについての解説書もあれば、登録外務員のテキストもあった。     
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