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だから電源は切っておく。変な場所にいるところに、家族から電話でもあってうっかり出てしまったら、面倒なことになる。現にそういうことが一回あった。盛り場で鳴ったのをうっかり取ったら、流れていた音楽に仕事をさぼっているのかと疑われた。
とにかく、金は使わないこと。
稼げばいいではないか、と言われそうだが、わざわざ稼がなくて生きていけるのなら、何をわざわざ劣等な経験を嘗めねばならんのか、と高等遊民風に言ってみたくなる。そして、嫌な思いをしてそれが将来につながる保証はどこにもないのだ。
とにかく、山ほどある携帯機能のうち、使うのは時計とカレンダーくらいときている。
しかし、カレンダーを見たところで、スケジュールを見たところで、予定もなければ、どこで何をしたという記録もない。第一、いつから飲み出したのか、覚えていないのだから、何日飲んでいるかは正確には知りようがなかった。
曜日の感覚もほとんどないので、何日スーツを着ていなかったか、思い出そうとした。4、5回は着ていた気がする。ということは少なくとも足かけ三週間。下手するとひと月。
これはさすがにまずい、らしい。よし、今日はこれ以上飲むのはやめよう。やめられるはずだ。やめないといけない。
その時、奇妙な感覚に襲われた。正確にいうと、襲われたらしい。
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