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いったん火をとめ、急いで二階に上がり、部屋にとびこむと急いでプルトップを開け、500mlの中身をニ口、三口で一気に胃に流し込んだ。間にあった、と思った。これで固形物を胃に入れてしまうと、酒は入らなくなる。
また階段を降りる。炊きたての米の匂いに、熱くした油の匂いが混ざっていた。洗面所から石鹸や整髪料の匂いがしてくる。チューハイにはいかにも人工的な匂いがつけられているから、区別はいけにくいかもしれないと思う。
ちらと壁の鏡に目をやる。顔は赤くなっていない。だいたい、あまり顔に出ないたちなのだ。しかし、肌が荒れてあちこちに吹き出物が出ている。内臓に来ているのだろうか。口から息を吐いて掌で受けて嗅いでみる。自分では匂いはわからない。
キッチンに戻り、フライパンに卵を割り入れ、火を細めにつける。割った卵の殻で少量の水をすくって卵のそばにじゅっと空け、すぐ蓋をする。
長ネギを切る。切ってから、洗うのを忘れているのに気付く。片手鍋にネギを入れ、ジャーからお湯を注ぐ。顆粒状の出汁をひとつまみに、袋に詰まった味噌を絞り出して入れる。どうでもいいことだが、褐色の味噌がにゅうっと狭い穴から絞り出されてくる光景は、どう見てもおかしな連想を呼ぶ。
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