姉の恋人

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              ※  週末、美桜は結婚式に新婦の妹として出席していた。少し痩せた体には、ボデイコンシャスなベージュのドレスがよく似合っていた。そして胸元には真珠が三つ並んだネックレスを付けていた。  披露宴が終わり二次会へと人が流れていく人を見送ると、美奈が美桜を抱きしめた。  「ありがとう。ネックレス、似合ってるよ」  美桜はたくさん言いたい事があったけれど、美奈の胸の中で頷くのが精一杯だった。  涙がまたあふれてきて胸が痛んだ。でも一週間前よりは、ほんの少しだけ痛みが少なくなってしまったのが悲しい。  もう少しの間、痛みを抱えていたい。今は痛みが斉藤さんへの想いのすべてだから。  美奈は美桜の耳元で「二次会においで」と(ささや)いた。  美桜ははっとして美奈の顔を見た。美奈は姉の顔で微笑んでいた。  「美桜、とっても綺麗だよ。」  そういうと美奈は抱擁をといて、新婦控え室に入って行った。  (綺麗だよ)  だから新しい恋を見つけておいで、ということ? それとも……。  二次会に出席する姉の友人、知人の中には斉藤さんの連絡先を知っている人がいるに違いない。  美桜はちらっと舌を出してくちびるをなめた。  優しすぎる斉藤さん。私のこと少しも好きじゃありませんでしたか?  斉藤さんとのキスを思い出し、頭の中で何かがスパークするような感じがした。  美桜はちょっと首を傾げた。そして口紅をさっと塗りなおし背筋を伸ばすと、見違えるように綺麗になった。スラリとした足で優雅に歩く美桜をホテルマン達が振り返る。  最後のキスは、さよならのキス?  それとも……誓いのキス?
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