姉の恋人

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 まだある。それはドライブしていた時。斉藤さんは運転していたので、前を向いていたけれど、美桜の話に時々、声を立てて笑っていた。  「もー、あの上司、パワハラなんですよ。面倒くさい作業とか、全部押しつけてくるし、細かい数字の入力してるのに、お茶をいれろとか言ってくるんですよ。」  と職場の出来事を大げさに嘆いてみせた時、信号が赤に変わって車が停まった。  斉藤さんは美桜をなだめるように、美桜の頭を軽くポンポンとした。  美桜は心臓が止まりそうになって、それからこれでもかというほど早くなった。美桜は斉藤さんがどんな顔でいるのか気になって、思い切ってチラッと横を見た。    すると、ちょうど美桜を覗きこんでいる斉藤さんと、目があった。斉藤さんの目が優しくて、信号が青にかわって、車が動き出すまでの1秒間、美桜は時間が止まってしまったような気がした。  「もしかしたら、斉藤さんも。」  美桜はいくつもいくつも、そう思える出来事を心の中で数えてしまう。
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