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「あ、もう美奈なんて呼び捨てにしたらいけないのかな。美奈さん、が、ね。」
美桜は思わず、斉藤さんの手を握る。いつものように、斉藤さんはふわっと軽く握り返してくれた。
「美奈さんに電話したんだ。」
「お姉ちゃんに?なんで…?」
「うん、美奈さんにおめでとうって言わなきゃいけないかな、と思って、さ。言わなくても全然いいんだろうけど、なんか変なプライドかな。それでその時、日程を聞いたんだ。結婚式の。まあ、本当はおめでとうなんて思ってないけどね。破局しろと思ってるよ。」
(霜田さんと別れたら、お姉ちゃんが戻ってくるから…?)
という質問は喉にひっかかって出てこなかったけれど、斉藤さんはひとり言みたいに話続けた。
「美奈さんとやり直すことはもう出来ない。もし彼女が戻ってきたとしても、ね。それに未練があるとか思われたくないんだ。」
美桜はこくりと頷いた。その後に続く言葉が想像つかなかった。
「だから、あのネックレス、結婚式で付けてくれないかな」
「えっ?」
突然の話の展開に、美桜の頭の中がハテナマークで一杯になったのをみて、斉藤さんは笑い出した。
「ごめんごめん。説明不足だったね」
深刻な雰囲気が一気に崩れた。
「あのね、あのネックレスは僕と美奈さんと、一緒に買いに行ったんだけど、選んだのは僕なんだ。だから美桜ちゃんが結婚式に付けて出席してくれたら、お祝いの気持ちを間接的に表せるかなって」
(あのネックレスは、斉藤さんが選んでくれたんだ……)
「美桜ちゃんのネックレス見たら、僕のお祝いの気持ちだと思って欲しい。だから僕の事はもう気にしないで、って言ったんだ」
「それで、お姉ちゃんは……?」
「わかったって言ってたよ」
「でも、本当はさ。そうでもしないと、美桜ちゃん、あのネックレス、付けられないでしょ。まだ一回も付けているところ見てないし。美桜ちゃんに似合うと思って選んだのに、付けてもらえないままなのは残念だから」
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