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だからお父さんとお母さんも、斉藤さんを「いい人だ」と思っていたのに違いないのだ。
斉藤さんが琉球グラスをくれてから間もなく、お姉ちゃんと斉藤さんは婚約した。
お姉ちゃんは、両親に結婚したいと話す前に、斉藤さんにもらった指輪を見せてくれた。
「大祐、マジメだから、お給料の三ヶ月分だったらしいよ」
とダイヤモンドがキラキラ光る、プラチナの指輪だった。
「うっわー。すごい、かわいいね。よかったね、お姉ちゃん。私も欲しいなー」
と美桜は言った。何気なく言っただけなのに、美奈は得意げな顔になった。そして、さっと自分の部屋に行って戻ってくると、
「ふふ。みーお。これなーんだ!」
と後ろ手に隠していた小さな袋を、パッと美桜の前に出した。
「ええ! 何? なに?」
「んー、美桜に結婚式に付けてもらおうかなーって」
美桜はそっと袋をあけた。袋を破きたくなかったからだったが、シールが意外に粘着力が強くて、ほんの少し破けてしまった。
「あっ」
美桜が思わず声をあげると、
「なに? 袋? そんなのいいじゃない。気にしない気にしない」
と美奈は笑って、早く早くと美桜をせかした。
「あー! 可愛い!」
袋の中にはリボンがかけてある、小さな箱が入っていた。箱をあけるとネックレスがキラッと光っていた。
「ゴールドのチェーンの方が、ドレスに合うかなって思って」
と美奈はいそいそと解説する。
「美桜の誕生石は真珠だから、結婚式にもぴったりでしょ? 大祐と私の二人から、プレゼント」
真珠が3つ連なっている回りに、小さなカラーの石がちりばめられているデザインだ。華やかで、可愛らしい。
「ありがとう~!」
感激して、一生大事にする! と宣言する美桜に、大げさだなあ、と美奈は笑った。
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