姉の恋人

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 美桜は姉から受け取った紙袋をのぞきながら、自分がこの取り残された物達を利用して、斉藤さんに会おうとするのは、よこしまなんじゃないかという気持ちがふと、よぎった。  そう思いながら、美桜は斉藤さんに会いたいという気持ちにあらがえなかった。  荷物を返したいと美桜がラインで連絡すると、斉藤さんから「処分してもらえる?」と返信がきた。  さらにタブレットなどは、もしよかったら美桜にもらって欲しいと書いてあった。   美桜は、紙袋の中を丹念に見てみた。美桜は斉藤さんにどうしても会いたかった。だから紙袋の中に、会う理由がないか探したのだ 。  しかし1番高価なのは、タブレットだろうし、洋服に無頓着な斉藤さんは、ジャケットにも未練はないだろう。何が記録されているかわからないが、USBメモリなどはむしろ捨てたいくらいかもしれない。  紙袋の中に会う理由はみつからなかったが、美桜はそれでも、斉藤さんに会いたかった。  ラインの画面を閉じて、電話をかけた。  「タブレットみたいな高価な物をもらえないし、斉藤さんの物を捨てられないです。それに斉藤さんにも会いたいんです。」  と美桜が頼み込むと、斉藤さんは会う約束をしてくれた。  その日は雨が降っていた。しめったひんやりとした空気が、待ち合わせのカフェにも入り込んでいた。  「あの、姉が、すみませんでした。」     「そのことはさ、美桜ちゃんは関係ないんだから、気にしないで。さ、何か食べよう。」  と斉藤さんは言った。少し見ない間に痩せたようだったが、いつもの優しいお義兄さんだった。美桜は遠慮しようかと思ったが、やはり一緒に食べようと思った。斉藤さんに何か食べさせてあげたかったからだ。  「私、お昼を食べそこねちゃって。斉藤さんはお昼はもう食べましたか?」  「ああ、うん。僕の事は気にしないで、食べなよ。」  とメニューを開いてくれる。  「一人で食べるの、恥ずかしいですから。私もお茶だけにします。」  と美桜が言うと、  「あーっと、じゃあ僕も何か食べるよ」  と、斉藤さんは笑って言ってくれた。美桜が思った通りだ。一人では食べられない、と言えば、優しい斉藤さんは、一緒に食べると言ってくれると思ったのだ。  「本当ですか?嬉しい! じゃあ、何食べましょうか?」  美桜は嬉しくなって、メニューを横に向けて、斉藤さんが一緒に見られるようにした。    
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