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斉藤さんは初めは美桜に気をつかって、会話したり食べたりしていたが、美桜につられて、だんだんと生気を取り戻してきた。
ワッフルを半分ほど食べる頃には、「久しぶりに人と話した気がするよ。食べ物も、食べていたけど、久しぶりに食べたーって感じがする」と笑ってくれた。
美桜は嬉しくて、頬が熱くなった。
「じゃあ、さっき話した、新しく見つけた行ってみたいレストランに、今度、一緒に行ってください!」
思い切って頼むと、斉藤さんはちょっと考えるそぶりした。
「お、お姉ちゃんも斉藤さんの事、心配しているし、様子を伝えてあげたいんです。」
と美桜は重ねて言った。斉藤さんは苦笑いして、
「正直言うとさ、美奈には安心して欲しくないんだよね。罪悪感で打ちひしがれて欲しいよ。僕に悪かったって、重荷を抱えて欲しいんだよ。」
とため息まじりに言った。
「でもさ、今日美桜ちゃんが、慰めてくれてるんだって分かっていても、食べたり話したりして、不覚にもちょっと元気出ちゃったからね。」
「私も楽しかったです!だから、一緒に行ってください!」
美桜は両手を組んで、お祈りのポーズで返事を待つ。
「美奈の策略に乗るようでいやなんだけど」
斉藤さんは、仕方ないな、と笑って美桜の目をのぞきんだ。
お姉ちゃんと三人で会っていた時には、こんな風に目を見てくれることはなかった。
そして斉藤さんが珈琲を手にとって、口に運ぶのを、珈琲カップにくちびるが押しつけられるのを見つめていると、美桜はくらくらとめまいを感じて、
自分が自分でなくなっていくような気がした。![02059c5c-2f85-4dd4-a5cc-b093cf7b1ced](https://img.estar.jp/public/user_upload/02059c5c-2f85-4dd4-a5cc-b093cf7b1ced.jpeg?width=800&format=jpg)
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