0人が本棚に入れています
本棚に追加
散々笑ってから、目尻に涙を浮かべながらこういう。
「お前って結構いいな」
なんて。
褒められたのかけなされたのか、一向につかめない。
「死ねってことじゃねえよ。とにかく寝ろ。話はそれからだ」
眠るとわかる目覚めの方法。
確かに理論上は合っている話の流れなんだろうけど、よくわからないや。
「嘘つかないでね」
「つかねえよ」
「ちゃんと教えてね」
「……教えてやるって」
その間が引っかかるけど、寝たふりをする。
「目は開けるなよ」
「わかってるってば」
そんな会話をしてから、かなり長い間があって。
「ねえ、まだ?」
しびれを切らせたあたしがそう急かすと、頬に温かいものが触れる。
(手だ)
ちょっとひんやりした、大きな手。頬をすこし指先で撫でているのがわかった。
(くすぐったいよ)
思わずゆるめた口元に、柔らかいものが感じられた。
(ん?)
一瞬触れて、離れて。
(今のって)
「白雪」
あたしを呼んでから、さっきよりもはっきりと触れた温かいもの。
(キス……)
ゆっくりと目を開けると、どこか大人の顔をした彼がいて。
「目覚めるの、早すぎ」
そういいながら、もう一度顔を近づけてくる。
「そぅ…か、な」
ドキドキする。
初めて会ったのに。
出会いはよくなかったのに。
こんな方法で目覚めさせようとしたのに。
「お姫様を目覚めさせるのは、王子様のキスってのが定番だろ」
そう囁いてから、薄く唇を開いたまま、口づけた。
最初のコメントを投稿しよう!