私の名前は、白雪姫

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「目覚めるかどうかの方法は? なにか試してみたりは?」 そう聞こえて、あの時からのことを思い出す。 私を激しく揺さぶって、みんなが泣いていたこと。 泣きわめいて、私を叩いたりもした。 あれは、実はとっても痛かった。 それだけ叩かれていたら起きられる気がしたほどに。 結果的に起きずに、今に至るわけだけれど。 それから、体をあっつあつのタオルで拭きながら、私に話しかけてきたり。 会話が出来たらって、何度も思った。 あとは魔法使いが来たのも知っている。 言葉になっていない、よくわからない呪文を唱えていた。 体がピリピリした時もあったけど、そのたびに小人のみんなの落胆した声がしたので、ダメだったんだなって気づいた。 そもそも自分が起きられていない時点で、気づいていたけど。 「占いもしたんだけど、こんなことを言っただけで帰ってしまった」 「そうそう」 「言っていた、確かに」 「そうだ。それをずっと守りながら、白雪姫を守っている」 「守った。守ってきた、ずっと」 「そう言えば今日はその日じゃないのか」 「そうだ、そうだ」 占い? それは初耳。 どんな占い結果だったのか、近くで話してくれていないから知らないんだよね。 (すっごーーーーっく、気になる) 目覚めることがなくなってから、なにかしてきたの? 今の話だと。 私に何かしてくれていたの? 記憶にない、なさすぎる。 「準備の時間だ」 「今日の当番は誰だっけ」 「誰だった」 「忘れた」 「どうする?」 「どうする?」 「じゃんけんか?」 占いで、一体何があったのかな。 当番制? 何をされてきたの? 私。 「じゃーんけーーん」 ひときわ大きな声の後に、「ほい!」と誰かが言ってからおかしな感じがした。 誰かに決まったことを、誰一人として口にしないし、妙な静けさで気持ちが悪い。 誰に何をされるのかな。私。 誰か早くなにかしゃべってよ。 「……まさか、こんなことが起きるなんて」 しゃべったと思ったら、不穏な空気になってるし。 「でも、じゃんけんは絶対だ」 「いや。今回のは、違うだろう」 「でも、じゃんけんは」 「まてまてまて。絶対が絶対じゃない場合も」 「いや、遠い昔から絶対のはずだ」 「……いいのか? これは」 「仕方がないだろう」 「仕方がないって言ってもだな、これに関してはちょっとまずくないか?」 一人がそう切り出すと、場がざわついた。
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