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「なにかしたの? 私」
「……台無しだ」
「台無しって、一体。ちゃんと説明を」
「出来るか」
「だってこのままじゃ平行線だし」
「話せるか、あんなこと」
「どんなことかわからない」
「わからなきゅていい。…あ」
「……噛んだ」
「……うるさい姫だな。こんなのが俺の…」
「え?」
俺の?
気になるのに、歯がゆい。じれったさの極致。
「……男らしくない」
「は?」
「男らしくない!」
いわゆるキレてしまった状態の私。一番ダメなやつ。
「男なんでしょ? 男らしくはっきりしなさいよ」
交渉には向いていないって言われたことがあったっけ。
だからあの時にも、あのりんごを簡単に口に……。
(やなこと思い出しちゃった)
「生意気な女だな、お前。どこが姫なんだ。どこが俺の婚約者なんだ」
懐かしい記憶にへこんでいる隙に、さらっと爆弾発言してくれている王子。
「はあああああああ?」
思わず大きな声になってしまう。
「こ、こ、っこここん、やくっぅ」
お城にいた時にはそういうのもあるって思っていたけど、この森に来てからそんな立場なんだってことはすっかり忘れていたのに。
「昔、お前の父親と俺の親父とで交わした約束だ。子供同士を結婚させると」
「しっ、知らない! そんな話、聞いてない」
「だろうよ。お前がこんなことになってから明らかになった話だからな」
気づけば王子らしからぬ言葉づかいの王子が、整えられた髪をくしゃくしゃにした。
「あー、もう。せっかくの計画が台無しだ」
「だから、それってなぁに?」
勝手に怒ってイラつかれても困る。
「言っていいのか」
急に真顔になってから、大きく息をつき。
「目覚めないお前を、ある方法で起こすことで、その婚約が成立することになっていた」
「え」
ある方法、って。
「そして、お前の身柄をわが城に置き、あの王妃から守ることになっていた」
「そ、うな……の?」
知らないところで勝手な話をすすめられても。
「それでその方法って? そんなに簡単に目覚めるような方法だったの?」
王子は聞き返した私を、じっと見据えてから一言。
「聞いて後悔しても知らねえぞ」
そういった。
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