草むら

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草むら

その小さな子猫は、目を覚ました。 薄汚れた段ボール箱のなかで。 昨日この箱に入れられ、そして車でとても長い時間揺られて、草むらに置いて行かれた。 僕のママは、どこだろうか。 お腹が空いたよ。 喉も乾いている。 その子猫は、段ボール箱から抜け出して、ちょこちょこと歩き出した。 運の悪いことに雨が降り出してきた、とても冷たい雨だった。 その子は、まだ生まれてからそんなに日にちが立っていなかった。 だから小さい体で、そんなに遠くまで行くことなんてできないのだ。 しばらく歩いていたが、冷たい雨と空腹と体力の限界がきて、だんだんと足元がふらつき、そしてその場に倒れ動けなくなってしまった。 朝のひかりが、カーテンの隙間から入ってきて、まぶしさで目が覚めた。 いい気分の目覚めだ。 さらに良いことに、今日は土曜日、仕事も休みだ。 こんな日は何をしようか。 少し、遠くまでドライブするのはどうだろう。 そう考えたらすぐに出かけたくなった。 着替えを済ませ、顔を洗って準備をする。 僕は25歳独身、彼女なし、よって出かけるのも、勿論一人である。 車を運転するのは好きだ。 まだ窓を開けるほど暖かい季節ではないが、車内は暖房がなくても快適だ。 山の方まで行ってみようと、交差点を右折する。 一時間ほど走って、前方に鳥居が見えてきた。 神社があるようだ。 お参りして行こうかな、無事にドライブできるようにお願いしていこうと考え、車を止めた。 境内は木々がたくさんあって、静かでゆったりとした気持ちになることができた。 手を合わせドライブの無事を祈る。 車に戻ろうとして、ふと鳥居を振り返った。 あれ、見たことがある、いつだったか、どうしてだろうか。 座席に座り、エンジンをかけようとした手が止まった。
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