疫病草

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 香織にとって俺は初めての男だった。予想外というわけではなかったが,最初にラブホに入った時からまったく抵抗することなく,俺が誘導する通りになんでもした。  初めての時に痛がることもなく,ずっと顔を隠していたが,それは近くで汚い肌を見られることに抵抗があるからだと思っていた。  それ以来,香織は俺が言うことをなんでもした。  彼女には「拒否」という感覚がないんじゃないか? と思えるほどすべてに従順だった。  会うたびに食事代とホテル代を支払ってもらい,セックスに飽きてくると香織のクレジットカードを使ってネットでアダルトグッズを大量に購入した。  ありとあらゆる玩具を使ったが,結局何をしても元々タイプではない香織には飽きてしまった。  飽きたというよりも,目の前で感じている香織の表情や,バックでしているときに極端に猫背になるところなど,ちょっとした仕草が生理的に受け付けなくなっていた。もっとも不快だったのが,香織が感じたときに白い肌が赤く染まり,肌の汚さが目立つなか,泣きそうな表情で俺を見ながら悶えているところだった。 「気持ち悪い……」  心の底からそう思ってしまい,それ以来香織を抱きたいとは思わなくなった。  やがて香織と会うことが面倒になり,これまで週一回会っていたのが,二週間に一回になり,月一回になっていった。  それでも香織は不満ひとつ口にせず,会うときは本当に嬉しそうにした。
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