疫病草

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 ある日,俺が高校時代からの古い友人達を呑んでいると,誰にどんなセフレがいたか,どんな経験があるかなどいつも通り下品な話で盛り上がっていた。  俺が何気なく香織の話をしたところ,淳史がやけに喰いついてきた。  淳史は俺の幼馴染で,二十歳のときに三歳下の彼女が妊娠してしまい学生結婚をした。社会人になり自分で稼ぐようになると,家に帰らない日が当たり前のように続き,二十五歳のときに淳史の浮気が原因で離婚していた。  淳史の女癖の悪さは仲間内では有名で,学生のころから何人もの女の子が淳史に弄ばれて捨てられていたのを俺たちは黙ってみていた。  そんな淳史が香織に興味をもったのは,香織が一切拒否しない女だったからだ。 「なぁ,(ゆう)。その子,紹介してくれよ。お前はもう興味ないんだろ?」 「淳史が興味あるんなら,貸し出してやるけど」  俺はすでに香織になんの興味もなかったので,淳史に「貸し出し」てみることを提案した。紹介と言う言葉に抵抗があったのと,まだ心のどこかで香織を手放す気がないことに気づき自分でも驚いていた。淳史はビールを口に含みながら,しばらく無表情で天井を見ていた。 「ああ,いいよ。貸し出しで」  突然、俺の方を向いた方と思うと,笑顔を見せながら貸し出しでいいと言い,目の前の唐揚げに箸を伸ばした。その表情はやけに清々しく,この表情に女たちは騙されてきたんだろうと思いながら,俺も同じ皿に盛られた唐揚げをつまんだ。 「じゃあ,香織にはそのうち連絡すんよ」 「おう,頼むよ」  ただ淳史に貸し出すのはつまらなかったので,香織とのセックスを撮影してくることを条件にしたが,淳史はなんの抵抗もない様子で黙って頷くだけだった。
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