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得体の知れない圧迫感と逃げたくても逃げられない恐怖感で頭がいっぱいになっていた。同じ空間に香織がいるような気がして,手を伸ばせば触れられるんじゃないかと思い,両手を脇の下に挟み,身体を小さく丸めた。
テーブルの上のスマホが突然鳴りだし,淳史のスマホ画面で見た覚えのある番号が表示された。
「え……?」
恐る恐る電話に出てみると,ノイズしか聴こえなかった。
「え……?」
「チ…………チッ……チチ……」
ノイズのなかに何かが聴こえた。それは微かな音だったが,どこか聞き覚えのある女の声だった。
「なに……これ……?」
「チチ…………チッ……チチ……」
「か……香織か……?」
「チチチ…………チッ……チチ……」
「なぁ……香織なんだろ……?」
プツッ
電話が切れると同時に,スマホの画面に床を這いずる淳史とバクが映し出され,女の脚が二人の顔を変形するほど強く踏みつけた。真っ暗な部屋で悲鳴を上げることも許されず,何度も何度も顔を踏みつけられ,二人の歯が折れ,鼻から出血し,眼球が飛び出した。そして画面がゆっくり引いてくると,薄暗い部屋の中央に香織が立っているところが映し出された。
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