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ギンが病院から退院すると,その足で真っ直ぐ悠と香織が最後に別れた花壇へと向かった。姉が心配してついてきたが,退院したばかりでタクシーの乗り降りですら,姉の助けがなければできなかった。
交通事故の後遺症が残るその身体は,左半身に大きな火傷を負っており,顔の半分が真っ赤に変色していた。左耳も以前の半分の大きさしかなく,目は真っ白になり,脚は複雑骨折していてボルトとプレートがいくつも埋め込まれ,膝が曲がらなくなっていた。
タクシーが駅の近くの花壇に到着すると,そこに咲いていた綺麗な花はすべて枯れ,土がむき出しになっていた。
「やっぱ,ここだ……ここ……」
そう言うと,固定された脚を器用に花壇の端に乗せ,真っ赤に変色した素手で土をゆっくり掘り返していった。軟らかい土を十cmも掘ると,中から白骨化したカップルの遺体が現れた。
「いた……」
白骨化した遺体の頭部は,まるで薬品かなにかで処理されたかのように綺麗で,とくに女性の顔の部分は白く陶器のように滑らかで透きとおるような美しさだった。
「やっぱり,ここにいたんですね……」
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