たぬきの神さん

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 一応神さまだし、可愛かったので気にはならなかった。  家にあったどん兵衛緑のたぬきにお湯を入れてあげてみると「こんな美味しいもの生まれて三百年間食べたことがない」と感激する。  三百年が長いのか短いのかよく分からないが、喜んでもらえて私も嬉しい。  しばらく私の家に居着いたたぬきの神さんは言った。 「いろいろ世話になったし、そなたの願い事を叶えてやろう」 「え!?できるんですか!」  最近ではただのたぬきに思えてきてしまっていたが、そうだ神さんだったのだ。  私は最初に祠でお願いしたようなイケメンの彼氏が欲しいと言うと、たぬきの神さんは一瞬悲しそうな顔をしたが、うなずくとそのまま私の部屋を出て行った。  数日後、私は身長百七十八センチ、切れ長一重のイケメンと道端で出会った。  彼はそのまま私の家に転がり込み、半分ヒモのようになったが、まあいいかと私は思った。  私は彼がたぬきの神さんなのだと薄々感づいていて、どん兵衛緑のたぬきをそっと差し出した。  するとどん兵衛赤いきつねの方がいいと言う。ちょうど買い置きがあったのでそれをあげると、「美味しい美味しい」と貪るように食べる姿がいつの間にかきつねになっていた。  聞くとたぬきの神さんの知り合いだと言う。  たぬきの神さんは切れ長一重の人間に化けられないので、自分が頼まれたのだと言う。  私は神さんの祠に行き「たぬきの神さーん」と呼ぶと、奥から神さんが出てきた。  「あんなことしなくてもいいんですよ。さ、私と一緒に帰りましょう」たぬきの神さんは頭を垂れて私の後ろをついて来た。  それから神さんはずっと私の家にいる。  何度か人間のイケメンに化けようとしてくれたが、どうも私のタイプと微妙に違うので、だったらそのままの姿でいいですよ、ということになった。  ちょっとペットを飼っている気分でそれはそれでいいような気がした。
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