たぬきの神さん

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 ときどき神さんの居た祠の前を通ると、たまに人が手を合わせている。  それを見ると「ああ、そこには神さんはいないんだけどな」と思ってしまう。  神さまのいない神社や祠があるというが、もしかしたらこんな感じで神さまはどこかに居候しているのかも知れない。  にしても、どういうことか全く私には彼氏ができない。  一応このたぬきの神さんは縁結びの神さまではないのか。  まさか神さんと私の縁結びではあるまい。  神さんの丸い背中を見ながら私はふとそんなことを思った。  これでは神さまは神さまでも貧乏神みたいじゃないか。  とは言っても、可哀想でたぬきの神さんを捨てる気にはなれない。  まあ、いいか。  たぬきの神さんは毎晩家を抜け出して表のきつねの神さまのところにお参りに行っていた。 「ずっとあの家にいられますように」  力の強いきつねの神さまにとって簡単な願い事だった。  おわり
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