対価

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対価

いつもの様に買い物をしていつもの様に 彼女の部屋に行く なぜだろう少し気まずく感じる どことなく会話も笑顔も少ない いつもの様にベッドに入り今日は、背中に抱きつく 暗がりのなか少し緊張した声で 「抱いてもいいよ?」 彼女の声が聞こえた 聞こえる様に少し小さな声で 「なんで?」 と問いかける 「あんた、私の事、好きでしょ。 好きじゃないにしても男女なんだから ドキドキは、してたと思う 私は、友達として抱きついてたけど あんたは、そうじゃなかった・・ 心臓の音が・・今でも背中から伝わってくる・・・ 好意を持ってくれているそれをわかってて 私は、その心臓の音が心地よくて抱きついてたんだ 悪い女だよね・・・我慢させた分、抱いていいよ」 バレていたのだ 口に出さなくても血流から伝わる鼓動の早さで 彼女にバレていた そして、彼女もまた 僕と同じ様に心にさわるチクチクを抱えていたのだ 結婚を約束した彼氏がいながら古からの友人というデフォルメに 隠した自分に思いを寄せる男を生殺しにいている事に 今の今まで生殺しにした分、 自分を抱けばいいと そして、彼氏がいながらも他の男に すがる自分が許せなくて傷つくことを 選んだ 裏を返せばお互いにこの話は、なかった事にしようという 暗黙の契約 彼女は、他の男、しかも大事なお互いの親友と寝る 僕は、大事な親友の彼女、 しかも彼女は、自分にとっても 親友として大事な人 重い念い想い楔ですべて なかった事にする 彼女が選んだ対価は、あまりにも重く お互いの身を焦がす選択だった それがわかっていても このチャンスを逃してなるものかと 心が震えた 今の今まで彼女を思ってきた タケルが彼女が好きだと自分に 告白しようと彼女と結婚すると 打ち明けられた時も 僕が選んだのは、どんな形でも 彼女の側にいることだった この思いに彼女が気づいて 自分の側からいなくなる事に 恐怖を感じ 誰にもうちあけまいと 自分の真実の思いに蓋をして 何度も何度も釘をさした そんな思いを今、開け放っていいと彼女から言われた 彼女の言葉は、いままで打ち続けてきた理性をすべて吹き飛ばした
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