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やっと…
「よーし、じゃこの1学期間このメンバーだ!
みんな仲良くしろよ。」
担任はそれだけ言うと、あとは生徒たちに任せた。もうすぐチャイムも鳴る。
時計の針の音がやけに大きく聞こえた。
まるで私の鼓動のよう。
立花と一緒に1学期間もいれると思うと、やっぱり心が踊る。
「キーンコーンカーンコーン。」
チャイムが鳴り、みんなが一斉に立った。
「ありがとうございました。」
声を揃えて、先生に向かって言うと生徒たちは、前の班のメンバーのところに戻って行く。
自分の居心地の良い家に帰るように。
私も、温かい蘭の家へ戻ろうとすると、ギュッと足を踏まれた。
「痛ぁ」
「ははははっ!やっと喋ってくれた。」
「立花!あんた足重い。」
「仕方ないやろ。
お前が喋らんから、なんとかして機会作ろうって思ったら、これが思いついてんから。」
「他にももっと良い案あるやろ?」
久しぶりに立花の声を間近で聞いた。
相変わらず心臓をくすぐる心地よい音。
やり方としては、最低だけど、立花…私と話したかったんだ。
途端に私はこれまで無視していてすごく申し訳なく感じた。
「ごめんね。」
そう心の中で謝った。
「また國末、魂抜けてるぞ!」
「ごめんごめん。」
「よし今から足相撲しようぜ。」
「えっ?」
「だから、足・相・撲」
私の心にずかずかと入ってくる声の侵入を抑えようと必死に頑張っていたから、私は立花の話を聞いていなかった。
急に、私の前に足を出してきて、手で「お前も。」と合図する。
私も渋々、いや少し嬉しく足を出し、本気のガチンコ相撲をした。
2人で笑い合いながら、足を押したりして…
あまりにも楽しかったから、時間なんて気にも留めなかった。
3回目の試合を始める瞬間にチャイムが鳴って、持ち越しになったが私たちは心の底から笑顔を見せた。
「楽しかったな。」
「うん。」
「あとで、もっかいするか。」
そして、これが私たちの日課となった。
1ヶ月と半月の心の鎖国から、私たちはやっと…
「ギリギリのところから想うことはもうできなくなってしまったけれど、これからはあなたのそばで心から笑わせて。」
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