奈良へ

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奈良へ

私の心が完璧に開いてから、2ヶ月が過ぎた。 私達は毎日足相撲をして、喋って、楽しく毎日を過ごした。 何気ない会話だけどどこか愛情を感じて、ささやかな毎日。 お互いに心の奥底を見せ合うようになったし、最近は「好き」とかっていう感情もあるけれど、「相棒」のような感じもしてきた。 そんな感情も出て来始めた頃、担任から奈良への修学旅行の話が出た。 もちろん行くのは今の班。 それがいよいよ明日に迫って来ている。 色々と準備して相談して、どんなものになるのか、クラス全員の気分が今高ぶっている。 もちろん私も。 「めっちゃ楽しみやな、國末。」 「うん!立花迷子になるなよ~。」 「誰がなるか! お前やろ。」 そう話しながら私達は今日も足相撲を始めた。 今のところ、38試合中36勝。 「っっー!」 お互いに押して、結局はまた私が勝った。 「やったぁ!37勝利!」 「國末、お前強過ぎ。」 たったの3分だけだけど、いい汗を流して、もちろん顔は充実した表情。 そんな立花の顔を面と向かって見る私は、いつも幸せだなぁと思う。 でも、立花が足を踏んで通ると、その気分はすぐに消えていく。 「はーい。みんな座ってー。」 担任の声でみんなが座り始めた。 今からは、奈良の最終打ち合わせだ。 早速、班の隊形にすると、私達は班長を選んだ。 立花海弥・國末花織・槇原敬之・村田香澄。 これが私達のメンバー。 香澄は、つい最近仲良くなってすごくおとなしい子。 槇原は、立花とよくつるんでいて面白くてクラスのムードメーカー的存在。 きっと修学旅行も楽しくなるだろうな。 1人でそんな事を考えていると、槇原が 「國末、班長じゃんけんでいいか?」と聞いてきた。 「あぁ、いいよ。」 適当に答えて、じゃんけんするとなんと1人勝ち。 結局、1番おとなしい香澄に決まった。 その他の役割も全て決まり、明日行くだけ。 集合場所は家から5分弱。 朝早いから、早起きしなきゃ。 今回の移動は特殊で、朝は通勤ラッシュを避けるため、バスで行く。 帰りは、自分たちで電車を使って帰るという手順。本当はどっちもバスが良かった。 ブツブツと文句を心の中で言っていると、立花が一方的に 「國末! お前俺の家の近くだよな。 朝ピンポンして。」 と言ってきた。 「えっ。」
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