第一章 棟方アキラ

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「そう言うことを聞きたいんじゃないんだけど……」 そうして再びため息を吐き「ま、いいや」と呟いて、遥汰は映像に目を向けた。 映像は、女性をいたぶる様子を流し続ける――。 鞭の音、悲鳴、見たこともないようなグロテスクな形をした道具。 女の悲鳴を聞きながら、イラつきが募る。 ――場所さえ特定できれば…… 音が気になって集中できない。鞭の音もだけど……悲鳴が邪魔――。耳障り。 音さえ消してくれれば、もっと集中できるのに……。 そこまで考えて、ふっと笑いそうになるのを堪える。 『冷たい女』『情ってものが感じられないんだよね』『ああいう女、無理』 『アルファの女は、俺達、下々の者は相手にしないってか。だから、嫌なんだよ。アルファ女は。無駄にプライドが高いしよ』 同僚の男達のそんな声が聞こえた気がして。 (情がないって言われてもね。仕事なんだから仕方ないじゃない。アルファは関係ないし) 言い訳がましく、そんなことを思う。
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