第一章 棟方アキラ

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癖を指摘され、気恥ずかしくなり、ボールペンをゆっくりとスーツの胸ポケットにしまう。 「先輩って……かわいいよね?」 「……は?」 唐突に言われ、遥汰を睨み付ける。 「鉄の女って言われてるわりに、そう言うところがかわいいなって……」 「バカ言ってないで、映像に集中して。貴方も情報分析官を目指してるなら……集中」 「はいはい」 遥汰が肩をすくめた。 遥汰は悪い男じゃない。 同僚の男達(ベータ)の中では、数少ないまともな部類に入る。 ――ただ、この軽口というか……若さゆえなんだろうけど。 (苦手――) 映像が女性のアップを映し出す。 恍惚とした表情―― 仮面の男が――恍惚とした女性の頬に触れ、そこで映像が途切れた。
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