第一章 棟方アキラ

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「以上が今回出回った映像の全てです」 簡潔にそう言われ、同時に部屋の照明が強くなる。 数回、瞬き、目をならす。 「この後――被害女性は、港にある倉庫の一つで死体となって発見されました」 映像を映し出していた捜査員が淡々と説明する。 「被害女性は、帝都大学に通う生徒――年齢は十八歳の……オメガです」 『オメガ』のところを捜査員が少しだけ、強調した。 「……未成年のオメガ女性か。マスコミが煩く騒ぎそうだな」 「てか、またオメガの被害者か……」 私の斜め前に座っている捜査員二人が、小声で会話する。 「死因は薬物を媒介にしたショックだと。薬物により、強制的に発情(ヒート)を誘発させられ、その負荷がそのままショック状態を引き起こしたのではと……監察医はそう判断しています」 ──抑制の逆。 「手元にあるファイルを参照してください」と言いながら、説明が続く。 「……遺体の損傷がかなり激しかったみたいだが、身元がよく特定できたな」 別の場所から、そう聞こえてきた。
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