第二章 寺鷹貴志

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「どうぞ。夜は長いですから」 貴志さんが私をからかうかのようにして、頬に軽く指を当てた。 紅くなりそうな顔を見られたくなくて、素早く立ち上がると、スマホの着信音が鳴った。 ――貴志さんのスマホから鳴ってる。 「すみません」 そう言って、貴志さんがスマホに出た。 「はい……。ああ、君か……」 私の方に少しだけ視線を動かして、すぐに会話に戻る。 「ああ……。その件なら、志田君の担当だけど……。うん……。うん……」 電話の相手に返答しながら、困惑したような表情をこちらに向けた。 「いや、それはわかってるけど……。君も知ってるだろ? 久しぶりに彼女に会えて……。ああ、確かにその件も大事なことだけど……」 貴志さんが小さくため息を吐いて── 「わかった……。すぐにそちらに向かうから。……いや、君が謝ることじゃない。瑠璃子さんの判断は正しいと思うよ」 『瑠璃子(るりこ)』──秘書の……久瀬(くぜ)さんからの電話──。
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