第一章 棟方アキラ

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バサッと乱暴にファイルを膝に置き、脚を組み替える。 「そうですね、一つだけ……ありますかね?」 「ほう?」 捜査本部長の目を見ながら、にっこり笑い―― 「今回の映像、音声はいらなかったかなと」 部屋中の雰囲気が「何を言ってるんだ?」――そんな空気になる。 「音声はいらなかったというと?」 「前回の会議の時に見せられた配信映像で、撮影スタジオがどんな部屋か。音声の反響等でおおかたわかっているはずです」 笑顔のまま、もう一度脚を組み替える。 「問題は、スタジオがどこにあるのか? これを分析するのに、音声が邪魔なことこの上なくて。まぁ、貴方がた男性陣は……この配信映像でお楽しみのようでしたので、水を差すのも悪いかなと、黙ってましたが」 笑顔でつらつらと言う私を遥汰が唖然としながら、見ている。
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