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「そもそも勝ち負けの決まった試合の何が面白いんだか?しかもドラマや映画に比べて見え見えでつまんない。」
「わざと技に当たったり痛がってみせたり子供騙しだ!」
「そもそもレスラーが嫌いだ!体が大きいだけであんな有名人になれるなんて人生不公平だ!」
ショータのプロレス嫌いの肝はそこにある。
彼は背の低さを気にしているので巨体が売りのプロレスラーには何一つ共感出来ないし感情移入できずにいた。
おまけにその小さい体は男子の嗜みであるプロレスごっこの受け役として目をつけられいつも痛い目にあっている。
おまけに相手は地球人よりも生物としてはるかに強い種族。太刀打ちも出来ずいつも痛い目に合う。
そんなプロレスに対する恨みつらみをブツブツと呟きながら開場前の物販スペースを見物して見て回るショータ。
そこで自らのTシャツやグッズを手売りしているのはレスラー達。
今や女子レスラーは憧れの職業だ。毎年凄まじい人数の乙女達がレスラーを志し試験に臨み 夢やぶれ涙を流す。
その中の生き残り更に選りすぐられたのがスペ女のレスラーだ。
その生き残る条件の中にはルックスも含まれている。
ごつくて強そうなレスラーもいれはモデルと見紛う程の美貌の選手もいる。
その中でショータは奇妙なレスラーを見つけた。
物販スペースの端っこでいまひとつ売れないTシャツを売り込んでいるレスラー?は酷く小さく 顔も特別可愛い訳では無い。
彼女のスペースには「赤嶺キリコ グッズ」と書かれている。
「あんなのもレスラーなの?」
ショータは不可解に思った。何しろ「赤嶺キリコ」と言うらしいレスラーは少年に目にはプロレスラーには見えなかった。
プロレスラーはデカくて怖い。そう思っていたがそのレスラーは全くそんな感じがしない。
そこら辺で雑用に追われる練習生どころか体育の先生の方が余程に強そうに見える。
「あんなの勝てる訳ないじゃん。チビは大きい奴には勝てないんだ。きっと負ける役の人なんだな。だから人気ないんだ。」
「ショータ!探したわよ!そろそろ中入ろう!」
母親が興奮気味で呼びに来た。どうやらそろそろ試合が始まるようだ。
「は~い・・・はぁ早く帰ってゲームしたい・・・」
ショータは気の進まぬまま自らに割り振られた席を目指す観客達の長蛇の列に飲み込まれてしまった。
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