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第1話 プロレスの魔力
「はぁぁ なんで僕までプロレスなんか見にこなきゃならないんだ・・・」
本日宇宙ステーションNo.7236の天候は快晴に設定され宇宙に浮かぶ巨大建造物の内部居住空間は過ごしやすい午後を迎えていた。
そんな人工の青空の下 高橋ショータは穏やかな昼下がりには相応しくない深いため息を吐く。
この宇宙ステーションは至って普通の宇宙ステーション。21世紀で言う所のそこそこ大きなベットタウンといった所か。
そんな都市の中心部がいつもよりは老若男女入り乱れて人通りも多く外部惑星の人種もチラホラ。
中には我々地球人から見れば異形にも見える姿の宇宙人も見えるがこの時代においてはさほど珍しくもない。
むしろ最近この宇宙ステーションに越してきた地球人高橋少年の方がレア種族扱いだ。
そんな多種多様の人種が1つの体育館に吸い込まれていく。
お目当てはそう スペ女の興行である。
全宇宙から見れば田舎に当たるここにもスペ女のレスラーと熱い試合は届けられ街のプロレスファンを熱狂の渦に巻き込んでくれる。
勿論スペ女の聖地 地球興行は超プレミアチケットで中々手に入らない代物だが こうした地方巡業 それも一軍ローランカーの興行なら比較的安く確実に生観戦が出来るので敢えてそこを狙うファンも多い。
この日高橋ショータは熱狂的プロレスファンである母親に連れられて初の生観戦に訪れていたのだがその顔は子供には相応しくない程冷めきっていた。
「まったく ママもなんでプロレスなんて下らないやつ好きなんだか?理解に苦しむね」
ショータはプロレスに全く興味の無い人間だった。
いくら宇宙中で大人気とはいえ こうした少年少女も少なくない。
彼もチビッ子の頃はテレビに映るレスラーに声援を上げていたが年齢を重ねるにつれ徐々に興味を失い今では全く見なくなった。
それどころか「プロレスなんてやらせ」「プロレスは八百長」「てかなんで技避けないの?バカじゃね?」とすら思っている。
他の子供より少し賢く ませたショータにはプロレスもそれに熱中する奴らも酷く滑稽に見えた。
今日だって一人1つ限りのグッズをツーパターン手に入れたい母親に懇願され渋々着いてきたのだ。
母親は既に満足気味だがショータはもう帰りたくてしょうがない。
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