第16話 ベルト無き防衛戦!!

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第16話 ベルト無き防衛戦!!

「すげぇ~!これがルナドームかぁ!!」 スペ女ビックマッチ観戦ツアーの相乗りバスから降りたショータは目の前に広がる巨大なドームな迫力に圧倒されていた。 高橋ショータ君 ある日キリコの試合に魅せられそれからずっとプロレスの虜の少年は先日放送されたあの記者会見を見てていてもたってもいられず 母親に懇願し今日の歴史的試合の観戦に漕ぎ着けたのだ。 勿論ルナドームまでの旅費にチケット代 その他諸々中々の出費は明らかで母親も難を示したが彼女も歴戦のプロレスファン。 そんな試合を見逃したくはない。そして息子の久しぶりに見る年相応の無邪気な御願いに一肌脱いでくれた。 その代償に旦那の小遣いはしばらく少なくなるがそれはしょうがない犠牲である。 2人は開場前のエントランスに足を運ぶとそこには既にスペ女ファン達でごった返していた。 その殆どがその身に棚端ツバサのグッズを身に付けている。 何しろ今日のキリコの試合結果によってはあの偉大な記録が途絶えるかもしれない。 勿論赤嶺キリコは最近話題のレスラーだが相手が相手である。 そこをひっくり返すには声援の力をキリコに授けなければならない。何しろファンにはそれしか出来ないからだ。 ショータもその1人。しかし彼は棚端の記録を心配しているのでは無い。 ショータはあの日 自分の常識を壊してくれた赤嶺キリコを応援しに来たのだ。 桜牙の物販スペースに足を運ぶとそこにはいつにない人だかりが出来ている。 しかしそこにはキリコの姿は無い。 彼女はもう一軍のメインイベンターだ。そうそう物販には来てくれないかと諦めた。 「は~い 遅くなりました!!」 そう思った矢先 新作の桜牙Tシャツを身に纏ったキリコがオーラも無く現れ品物を捌き始めた。 その飾らない姿に棚端ファンの財布の紐も緩む。 「頼むよキリコ!」「絶対勝ってね!」「お前に掛かってんだぞ!!しっかりね!」 口々に棚端の為に頑張れと自らにでは無い声援を受け それを無難な言葉で返すキリコ。 その硬い笑顔がいかに彼女の小さい肩に重圧が掛かっていることは幼いショータにも解った。 「キリコ選手!」 人混みを掻き分けショータが憧れの選手の前に立つ。 「あっ!いつかの!!」 社交辞令的な笑顔が解れショータにはあの日見せてくれた眩い笑顔を見せてくれた。 その人懐っこい笑顔はこれからリングで人と殴り合う人とは思えない。
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