第18話 決戦前夜

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第18話 決戦前夜

「はぁ...はぁ...はぁ...ラスト...ワン!」 ガシャン! ベンチプレス台に置かれる重量200キロのバーベル 汗だくのキリコがアミノ酸タップリのドリンクを喉を鳴らして一気に飲み干す。 鍛錬で燃え盛る筋肉 本来なら疲労ですぐにでも横になりたくなる。 しかし今のキリコは何かに突き動かされる様にトレーニングにのめり込んでいる。 先日のマーダーピエロとのタイトルマッチを見事勝利で飾り また1つレスラーとして成長を遂げたキリコ。 しかし生き残った先に待っていたのは安寧ではなく新たな戦いの舞台 猪場正至のぶち上げた新世代トーナメントと新たなるベルト「SWPシンデレラ」 そこにはあの試合を見届けていた仲間 ライバル達 あの場は絆で協力した仲だが今度はたった1つの王座を巡って鎬を削る事になる。 「燃えてくるぜぇ...」 トレーニンググローブを締め直して今度は両手それぞれに20キロダンベルを手に上腕二頭筋をいじめ始めた。 キリコは今大会初めて優勝候補としてエントリーされている。 これまではいつもエリカやシンの影に隠れて来たが今回は違う。 先日公開された出場8選手 それぞれがキリコの首とベルトを虎視眈々と狙っている。 デビューから数年 これまでの集大成となる大会に皆が静かな闘志を燃やしながら研ぎ澄まされていく。 それはキリコも同じ ココ最近はチームの為 ユニットの為に戦ってきた。 今度は正真正銘 個人闘争! 久々にがむしゃらだったあの頃を思い出す。 勿論今も余裕を噛ませるほどのキャリアでは無い。 一寸先は闇 五里霧中の道無き道を歩く事には変わりないが 1試合に全てを賭けるトーナメントは胸がザワつく。 「うぉぉぉぉ!!!!」 二頭筋がパンパンになり 熱を帯びる。 キリコは胸の昂りをトレーニングによって発散し明日に控えるトーナメントに向けて 静かに 鋭く ギラギラと 身も心も鬼に近づけていく。
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