第4話 タッグという名の小宇宙
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第4話 タッグという名の小宇宙

「だーっ!もうなんでカバーに来ないの!!前しか見えてないってお前は猪か!!」 「そういうレイさんだってなんであれくらい自力で返せないの?ダイエットのしすぎじゃないの?ちゃんとご飯食べてきてよ!!このもやしっ子!!」 「うるさい!!」「なんだとぉー!!」 地球 東京某所にあるスペ女一軍道場で女2人が罵りあいながら練習に励んでいる。 片方は今一軍若手部門で飛ぶ鳥を落とす勢いの赤嶺キリコ もう片方は天才の呼び声高き稲荷場レイ。 先日激しい試合を繰り広げた2人が再びリングで睨み合っている。 本日の練習はこの目の前の相手を倒す為の練習では無く一緒に戦い道を切り開くタッグマッチの練習のはずだった。それが今では相手を罵倒するマイクアピールの練習にさまがわりしてしまっている。 タッグマッチ それは宇宙でただ一つ2人1組で戦う格闘技のルール。 タッグパートナーとは一蓮托生 片方が負ければ試合終了。だから互いに庇い合い 互いの欠点を補い合い助け合う。 言うは易しだがこれが難しい。 基本的にプロレスラーは個人商売で人気商売だ。 隣のヤツより少しでも目立ちたい 活躍したい。 同期を足蹴にし先達の寝首を掻き 後輩を人気の養分にする。 そうした「我」の強さが必要で その力がより派手な技 より威力のある技 コスチュームを生み出しプロレスは発展してきた。 しかしタッグマッチとなるとそうはいかない。それ故に奥が深く観客もこの不可思議なルールに熱狂する。 そんなタッグマッチで最も重要なのは誰と組むかだ。 自分が目立つ為に格下と組むのも良い 同期の桜で戦うも良い チャンピオンとチャンピオンで組むのも面白い。 しかしそれらが即席タッグでは無く本物のタッグチームになれるかといったら疑問が残る。 シングルのチャンピオンがタッグトーナメントに出る為に同期や仲間と組んで戦う事もあるがやはり結果は残せない。 そこで最も輝くのは「タッグ屋」と呼ばれる魂で繋がった2人である。 シングルではそこそこのレスラーでも2人ならどんな相手にも負けない。そんな阿吽の呼吸を会得した奴らの事だ。 安い言葉だが「絆」の力が大きいタッグの世界。その絆とは一朝一夕では培われない。それどころか相方次第ではどんなに一緒に時を重ねても手に入らない可能性すらある。 今のキリコ レイはまさにそんなに状況だ。
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