(〇六)

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「ええ…工藤が女に会いに行くと言ったことといい、ジョギングしてた夫婦が聞いたハイヒールの音といい、状況証拠の観点から見れば、私は今の時点では、吹田中央署の判断は間違ってないと思います」  この会話のやりとりを黙って聞いて考え込んでいる霧島の様子が気になった村瀬が、 「どうかしましたか? 管理官」  と、声をかけた。 「うん…気になるっちゅうか、ちょっとした疑問なんやけどな…」  そう霧島が切り出すと、全員が注目した。 「牧田真貴と眞木珠樹…この二人の工藤に対する殺害動機と思われることに関してなんやけど、状況が二人とも似てるのはなんでやろと思てな」 「金と男女関係のもつれが、似てますか?」  そう青葉が聞くと霧島が軽く右手を振り、 「内容やない。状況や、状況」  と、言った。  青葉が不思議そうな顔をする。 「いいか、我々が最初に掴んだ二人の工藤に対する動機は、その後の調べで、正反対やったかもしれない…と言った疑惑に変わった。違うか?」 「そう言われてみれば、牧田真貴は金を借りていたはずが、そうではないかもしれないし、眞木珠樹は工藤に捨てられたと言っていたが、捨てたのかもしれない…確かに似てますね」  と、葛城が言った。  霧島は頷き、 「他の事柄も気になるが、この点の疑問が解ければ、工藤の会社スタッフの証言も含めて、全体像が見えるんやないかと、私は思うんや」  と、言った。  霧島が言った疑問を解決すべく、楠、村瀬、葛城、佐和、青葉、滝矢たちは、それぞれ、今一度、牧田真貴と眞木珠樹の関係者への聞き込みを開始した。  その中で、青葉と滝矢のコンビが、牧田の会社関係者を当たっていたところ、気になる証言を得た。 「変わった名前?」  三十代のサラリーマンの言った内容に対し、青葉がそう言った。  場所は新大阪周辺のコンビニ駐車場の喫煙者スペースである。 「どういうことですか?」  と、青葉が聞いた。 「なんや知りませんけど、自分と同じ名前の女と知り合ったとかなんとか言うてましたわ」  青葉と滝矢が一瞬、顔を見合せた。 「その女性の名前、聞きましたか?」 「聞いてませんけど、同じ名前ですから、マキタマキちゃいますの?」  牧田真貴と眞木珠樹が知り合い?  しかし、この二人は互いに互いのことを、警察には語っていない。  これは一体、何を意味するのだろうか…  この事実は青葉と滝矢に衝撃を与えた。
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