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春一は鈴音に、
「今の電話は冬依からだったよ。中央第二病院まで迎えに来て欲しいって」
「病院? 冬依くんの身に何か?」
鈴音も春一と同じような心配をする。
春一は首を振る。
「いや冬依は心配ない。自分でそう言っていた」
こんな大切な事実を記憶から飛ばして焦っていた自分が恥ずかしい。
「残念ながら途中で切れてしまって事情がよくわからないんだが、とにかく俺は病院へ行ってくるよ」
電話が繋がらなくなってしまったことまで、鈴音に教える必要はない。
おそらく病院だから電源を切っているのだろうと推測して、
「悪いけど、秋哉の方を頼めるかな」
春一がそう言うと、鈴音はギュッと唇を噛みながらうなずいてくれた。
ありがたい。
こんなとき春一ひとりだったら、どうしていいかわからなかっただろう。
それでも鈴音ひとりで行かせるのは心配なので、春一はタクシーを呼ぶと共に、もうひとり、春一が一番信頼している弟に連絡を取ることにした。
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