93人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
三本目の電話
電話をかける先は、もちろん夏樹だ。
「夏樹に連絡するから、戻ったら一緒に秋哉のところへ行ってくれ」
コール音を鳴らしながら鈴音に言えば、鈴音もコクリとうなずく。
ところが、何度呼び出しを繰り返しても通話がつながらない。
「?」
まだ夏樹の仕事が始まるような時間ではないし、女の子と遊んでいても、電話ぐらい出られるだろう。
いや、そんな場合じゃないことも、あることはあるが。
「……まだ昼間だぜ」
自分のことは棚に上げて、つい愚痴が出る。
それにしても夏樹と連絡がつかないのなら、鈴音にはひとりで行ってもらうしかない。
まだ明るい日中だし、向かう先には秋哉もいるわけだしと、
「悪いけど先に秋哉んとこへ行ってくれるか? 冬依と合流したら、俺もすぐに向かうから」
その時、コール音が止んでやっと通話がつながった。
ほっと胸をなで下ろして、
「夏樹どこにいる? すまないがすぐに戻ってくれ」
靴に足を突っ込みながら告げると、
「……あのう、もしもし」
電話の向こうからは知らない男の声がした。
最初のコメントを投稿しよう!