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おれの声が聞こえた母さんが、パタパタと玄関に駆け寄る。
スーツを着た木藤を見て少し驚いた様だった。
「お邪魔します。」
木藤は母さんにそう言った後、おれに「何も説明して無い感じ?」とそっと聞いてきた。
「ネコの登録の件で話があるってのと、木藤が来るって話しはした。」
男同士で付き合いました結婚しますっていうのも、友人が5000万という大金を準備してくれるというのも、あまりにも現実味が無さ過ぎて上手く説明出来なかった。
だって、自分自身も本当に現実なのかよくわからないのだ。
ニット帽を外して、困った様に木藤を見上げる。
木藤は苦笑に近い笑みを浮かべると、母さんにご家族でと声をかけながら先ほど購入した羊羹を差し出していた。
一軒家に住んでいた時と違って、玄関を上がるとごく短い廊下が合って直ぐに茶の間だ。
襖を開けると、父さんと妹の加奈はすでにそこに居て座っていた。
母さんが
「木藤君が、皆さんでって下さったの。」
と父さんに報告をする。
加奈が嬉しそうに喜んでいる。
木藤は加奈の方をチラリと見た。
その後、座布団の上ではなく畳の上に直接正座をした。
慌てて、座布団の上に座ってもらう様に促そうとしゃがみこんだ。
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