伴侶になろうか

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それを木藤自身に制される。 「今日はお時間をいただきありがとうございます。」 凛と通る声で話し始めた木藤の方を見る。 「突然の事で驚かれるかも知れません。」 そう言うと木藤は頭を下げた。 所謂土下座の恰好をした木藤におれを含め家族全員が慌てる。 「僕は息子さんと結婚を考えています。 息子さんを僕に下さい。 必ず、幸せにします。」 静かに木藤が言った言葉に父さんと母さんが固まる。 加奈は意味が良く分かっていない様だった。 母さんに、どういう事?という視線を送られる。 「とりあえず、木藤君顔を上げてくれないか?」 父さんに言われ木藤は顔をゆっくり上げた。 おれは木藤の横に同じ様に正座をして座った。 「木藤君と誠一は、その付き合っているのか?」 「はい。」 「付き合っているといっても、男同士で結婚っていうのは……。」 父が言葉を濁す。 「法律的に婚姻関係になれない事は承知しています。 ですが、誠一さんと人生を歩みたいと思ったんです。」 「それは、誠一がネコだと分かったからか? 誠一が収容所へ行くまでの間、二人で過ごしたいということか?」 絞り出す様に父が言った。 「違います。 誠一さんは収容所へは行かせません。」 そのまま木藤が続けると激昂したように、怒鳴りつけた。     
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