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スキンシップは大切です
堤がネコになってよかったなと思うことが時々ある。
本人は絶望を味わったことも知っているし、今も細々とした生活上の不便は多々あるのに、こんな事を思ってしまうのは不謹慎だという事は重々承知している。
けれども、堤がネコにならなければ、きっとお互いに気持ちを伝えあうことは無かったし、堤が俺無しじゃ生きていけないのは、やっぱりネコだからだ。
登録の所為で堤は自分一人の意思で居住を変えることもできない。
どうしたって、堤は俺から離れることができないのだ。
それが、嬉しい。
俺がこんなに、酷い感情を内に秘めていることを多分堤は知らない。
リビングでローテーブルに向かって、仕事の資料を並べて確認していると、堤がそろそろと音もなく寄ってきて俺の後ろに背中をくっつける様にして座った。
ネコはスキンシップを好むと堤と暮らすようになって知った。
元々、堤が恋人とのスキンシップを好む人間なのかは知らない。
それは、知る必要のない事だった。
持っていたボールペンを置いて、体重をやや俺にかけた堤がバランスを崩さないように上半身だけ振り返ると、バツの悪そうな顔で堤は俺を見た。
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