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毎日そう思っていた。そんな私の夢の中に、ある時光る何かが現れた。
あと四年、我慢して。頑張って耐えて。みんなあなたを待っている。
夢の中でそう言われ、私はこくりとうなずいた。
それと似たような夢を四年の間に何度も見て、私はむしろ今日という日を待ち侘びていた。
祠の中にはさらに小さな祠があって、それを開くとうんと下の方にぼんやり橙色の輝きが見えた。
あれが山神様の本体。溶岩と呼ばれるもの。
普通に考えて、人間を何人生贄にしたところで噴火を止められる筈もない。でもこの辺りでは、贄を捧げれば神様は鎮まってくれるという風習はいまだに信じられている。
祠の中には、この馬鹿げた迷信の犠牲になった少女達の遺骨が何十人分もあることだろう。
でも今日で総て終わる。山の神様に嫁ぐのは私で最後。
飢え死になんて待ってられない。早く全部終わらせたい。その気持ちを胸に、私は下方にある橙色の輝きめがけて身を投げた。
周り中から声がする。
待っていた。やっとこの日が来た。
自分では判らないけれど、私には物凄い霊力っていうものがあるらしい。今まで生贄にされた子達の無念をまとめ、増幅させられる力。
みんな本当は死にたくなかった。いもしない神様のお嫁さんになんてなりたくなかった。生きて人生を全うしたかった。
だから今日で終わらせるの。この悪しき風習を。
* * *
神のお山が火を噴いた。
辺り一帯は総て燃え、人も獣も草木も死に絶えた。
生贄の風習も、それを為すものが消えて絶えた。
噴火の火に清められ、少女達の無念も絶えた。
山神の嫁…完
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