第一話 ハロウィンの奇跡

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ハナコ「フン、効いてないよッ」    立ち上がり、再び殴りかかるが、全く迫力のない殺陣。 ハナコ「えいッ、やーッ、とぉ!」 ヒトミ「フフフ……こないだよりは楽しめそうだ、こわっぱが!」    コボルト、ドラゴンも、オーガー、ゴブリンと立回を演じるが、動きが悪く、格好が悪い。    客席にいるのは、水晶玉の表面をスマホの画面のようにいじっているトロールと、いちゃついて舞台を全く観ていないオークのカップルのみ。 ハナコ「まだまだッ、あたしたちは負けねー!」    口元の血を拭うような仕草をして、ドワーフに立ち向かって行く。 □仝・入り口    巨大なリアカーに舞台道具がゴチャッと積まれている。    ハナコたち劇団員がダークエルフと向かい合っている。 ハナコ「オーナー、お願い! あと一週間、いいえ三日でいいから続けさせてッ!」    両手を合わせてオーナーを拝む。 オーナー「ダメです。約束したでしょう、今日、席が半分以上埋まらなければ『劇団ファンタジア』の公演は打ち切ると」    言葉は丁寧だが、腕を組んでハナコを見下している。 ハナコ「そんなぁ……。長い付き合いじゃない? 同じエルフのよしみで、何とか……」
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