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限定一名
その噂を聞いたのは、バレンタインが一週間後に迫った放課後のことだった。
私立高校の合格発表が一段落した教室は、張り詰めた雰囲気がちょっとだけ緩んでいて、中学最後のチョコレートを誰に渡すかなんて話がチラホラ聞こえてくる。
そこで……聞いたんだ。圭太と芹香がついにって。
元々仲が良いのは、みんな知っていて、半ば公認の仲だった。
それでも。
ほんの少し、期待してた。
圭太とわたしは一年の頃から同じかるた部で。お互い部長もやったりして。
先輩に怒られてふてくされたときも、後輩がついてきてくれなくて悩んだときも、最後の試合で泣いたときも。
いつも圭太がいてくれたから。
部活を引退して顔を合わせる時間が減って、圭太が芹香と同じ塾に通い始めて勉強に打ち込むようになってからも。
それでもまだ、圭太に一番近い女子はわたしなんじゃないかと、うぬぼれていた。
最後のバレンタインか、それでなきゃ卒業式。
ちゃんと言うつもりだった。圭太が好きだって。
でも……芹香もわたしの友達だ。
友達の彼氏に告白なんてできない。
でも。
でもばっかりだけど、でも。
かるた強豪の私立高校も受けてる圭太と、公立一本のわたしは、きっと違う高校に行く。
想いを伝えられないまま卒業するのは嫌で、わたしは芹香に会いに行った。
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