限定一名

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行く先は、かるた部の練習室。 案の定、圭太はそこにいた。 「──おっ! 睦美、ここに来るなんて久しぶりだな」 普段通り、ひょうひょうとした笑顔を浮かべる圭太に怒鳴りつける。 「圭太のバカ! 彼女になんてこと言わせてんの!」 「なんの話だよ!?」 「芹香が……補欠なら……まだ空いてるって言ってた」 「なんだ、その話か。そう、二次募集してるみたいなんだよ。お前も受けてみたら?」 「だから……え……二次募集って、え、なんの話? 圭太は彼女をそうやって募集してるの?」 「は? お前の方こそ、何の話だよ? 青木高校の話だろ。二次募集は、授業料減免の特別枠の募集なんだ。一回親に相談してみろよ。お前なら、受かるだろ」 「え……え、ええ!?」 「で、俺の彼女の募集って何」 「……芹香と付き合ってるんじゃないの?」 「誰とも付き合ってない。青木高校の発表は、今日職員室で芹香と聞いたけど、それがなんでそんな話に?」 「……こっちが聞きたいよ」 ヘナヘナと畳に膝をついたわたしの前に、圭太もしゃがんだ。 「……彼女は募集してるよ。限定一名だけど」 おそるおそる顔を上げると、夕焼けの消えた部屋に圭太の笑顔が浮かんだ。 「応募してみる?」 いつも背中を押してくれたその笑顔に、わたしは思い切り頷いたんだ。
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