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男性が父親で、ベッドに横たわるのが多分その母親であろう、二人は当然回りの人々と同様に黒い髪に赤い瞳をしていた。
ともなれば、尚更この男性が抱き抱えた赤子がそんな二人の間から産まれた子供だと言うのが信じられなかった。
「で、伝承によれば…白い髪に碧眼の者が産まれたら災いが起きるんだよな…?」
「ど、どうするんだ…?」
周りがそうざわついていると、そんな中。
「落ち着け」
そう、低い声で誰かが言えば辺りがシンッと静まり返る、赤子を抱き抱えた男性もその声を発した主の方を見て言う。
「っ…ちょ、長老」
そこには、深いシワに白髪の髪に髭を携えた、この場で一番歳を取っていると思われる杖を着いた老人がゆっくりと人々の間を掻き分け男性の元に寄り言う。
「…白い髪に碧眼の者が本当に産まれたからと言い、そう慌てる事はあるまい…
これはお前達二人の子供…それに間違いはないだろう?」
そう長老が言えば、ベッドの上に横たわってた女性が。
「…ええ…そうよ…あなた…その子を私にも…よく見せて…?」
「あっ、ああ」
そう男性が女性に赤子を近付け見せれば、女性は額に脂汗を浮かべつつも、近くに来た赤子を受け取り大切そうに抱きながら。
「この目の辺りなんか貴方にそっくり…いくら伝承に…災いをもたらすってあったとしても…
この子がそうだとは私は思わないわ…だって…私と貴方の子だもの」
そう女性が言えば、男性は深く頷きながら。
「…それも…そうだ、俺と妻の間の子が…災いをもたらす訳無い」
そう男性と女性が言えば、長老は。
「うむ…そうじゃ、伝承など所詮は“伝承”でしかない、作り話か枕話も良いとこじゃで…
皆の者も心得たな?伝承など真に受けてはならぬぞ、この子は…今日から新たにワシ等シロディアの“家族”になる子じゃ 」
そう長老が言えば、周りの人々も頷き、不安そうな雰囲気から祝福へと変わった。
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