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「なんでこうなったんだろ…」
日が傾き、一人、また一人と人が減っていく公園のベンチに座り込んだ高瀬は、ペットボトルにまとわりついた水滴を手で拭い一気に煽った。渇いた喉を潤すお茶の温さに眉をひそめ、空になったそれを隣にあったゴミ箱へ投げ入れる。元はとても冷えていたそれを寄越した門真の姿は、ない。
『何でも屋!探してみようぜ!!』
大体の予想はついていたが、案の定そう言った門真は自分のアパートへ向かおうとしていた高瀬の腕を力強く掴み、正反対の方へ歩みを進めた。
そこまではよかったのだ。
連れてこられたのは、安藤百合がよく立ち寄っていたという公園。その記憶はないため、何でも屋に声をかけられたのがこの公園かは定かではない。
しかし可能性が一番高いのは此処だと言ったらしい。
偶然にも高瀬の住まいからそう遠くない場所にあったそこは当たり前だがなんの変哲もない公園だ。学校帰りだろう子供たちや、その親が各々好きなことをして過ごしている。
手当たりもないまま連れてきた門真は、持ち前のコミュニケーション能力をいかし、談笑する親達の中に紛れ込んでいった。
門真は言い出すと聞かない。これも幼い頃から変わっていない。そして飽き性。なんの手がかりもないとなればすぐに諦めてしまうだろうと考え、大人しく付き合うことにしたのだ。
暫くしてもどってきた門真はゆるく首を振った。
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