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やはり安藤からもう少し話を聞くべきだ。しかしまたにしようと口を開くよりも先に、次の団欒の中に行ってしまった。子供を迎えに親がくればすぐにその人の元へ走り、収穫を得られず肩を落とし、また別の親がくれば走りを繰り返すこと数回。
人が疎らになっても一向に手がかりを掴めない事に流石に疲れたのか、大人が着てもベンチから立ち上がることはなくなった。
もう帰ろう。そう言うために開こうとすると再びそれを遮るように門真は立ち上がりながら叫んだ。
『秋人!ここで座り込んでてくれよ!確かこの位の時間に座ってたって記憶まではあるらしいから!』
じゃあ俺バイトだから、と捲したて去っていた門真の背中をただ見つめることしか出来ず、今に至る。
もう完全に人も居なくなって、いよいよ暗くなってきた。どれ位待っておけとは言われていない以上こちらのタイミングで帰っていいということだろう。スマホを見ると十八時三十分、門真が帰ってからおよそ四十分。耐えた方だと自らを労い立ち上がろうとした、その時だった。
「浮かない顔ですね。何か悩み事ですか?」
公園のライトに照らされた、小さな花束を手に持った同じ歳位の青年。
これが、高瀬秋人と何でも屋の出会いだった。
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