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「隼人!早く起きなさーい!」お母さんが呼んでいる。春はやっぱり気持ちいいなあ。もう少しだけ。
ねっ、いいでしょう?僕は朝の陽だまりでまどろんでいた。「ちょっと隼人!あなた転校初日でしょ、遅れるわよ!」転校?初日なんだよな。
「え?ええー!今何時!」僕は慌てて、布団を跳ね除けて眼鏡を探した。
僕は高校3年生の17歳。お父さんの仕事の都合で、この町に引っ越して来たんだ。今日から通うデリシャス学園は、クリスチャンのエリート進学校だ。
でもうちは、クリスチャンじゃないよ。進学率がいいからと、お母さんが勝手に決めて来たのだ。
「何をぶつぶつ言ってるの?早く食べなさい」うちの朝はいつもパン食だ。僕はトーストをかじりながら、ミルクで流し込んだ。
「もう行くよ」僕はブレザーに手を通した。
「今度は友達作りなさいよ。あなた前の学校でも、仲のいい子いなかったんでしょう?いつまでも大人しいままじゃ駄目よ」またお母さんの口癖だ。
「分かってるよ。行ってきます」僕は玄関を閉めた後、そっと呟いた。「作れない訳があるんだよ」
それはお母さんだけじゃなく誰も知らない。
僕は1人、はーとため息をついた。
「おい!皆んな静かにしろよ!」先生が教室に入るなり大声を上げた。「さあ、入って」僕は先生に促されて教室に入った。「今日から新しいクラスメートのオノウエ君だ。皆んな仲良くしてあげてくれ」
僕は一歩前に出た。「尾ノ上 隼人です。よろしくお願いします」やっぱり転校初日は緊張するなあ。
「じゃあ三崎の隣が空いているから。三崎は学級委員だから、色々と教えてやってくれ」と先生は僕と、窓際に座っている女子生徒を交互に見た。
僕が席に着くなり「私は三崎 敦子。よろしくね」
うわー可愛い!ショートカットにくりっとした瞳。
日焼けした肌に、白い歯が印象的だった。
「う、うん。こちらこそよろしく」馬鹿か僕は!
それだけか?何も気の利いた事も言えず、昼休みのベルが鳴った。
「尾ノ上君はお弁当?」三崎さんが聞いてきた。
「いやあ、パンでも買おうかなと…」と応えかけると「じゃあ食堂行こうよ。案内してあげるから」と彼女は、僕の肘を掴んで立ち上がった。
そこはテラスまである、綺麗な食堂だった。
「ここのキツネうどん、結構人気なの」と彼女は僕の分まで食券を購入してくれた。
すると後ろから「お前、転校生だよな?」と声がした。
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