眠りを落とした男の話

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 そして、その終わりは唐突に訪れた。    ある日私は、ソファの上で目を覚ました。カーテンの向こうが明るくなっている。  一体何が起ったのか全く分からなかった。先ほどまで夜だった。間違いなく夜だった。  読んでいたはずの漫画は床に落ち、淹れたばかりだったコーヒーは、テーブルの上ですっかり冷たくなっていた。  私は、自分が「眠った」ということを理解するまでに、結構な時間が掛かった。そしてそれを理解すると、言いようのない感覚が込み上げてきた。    今までの自分とは違う、新しい自分になったような。清々しくて、爽やかで、何にでもなれるような、何でもできるような、そんな無限の可能性に満ちあふれた存在になったような。  窓を開けて思い切り叫びたい、アメリカ人のように誰彼構わず抱きついて挨拶を交わしたい。目覚めた朝に「おはよう」という言葉が、こんなにもしっくりと当てはまるなんて知らなかった。  まるで生まれ変わったような気分だった。みんな、こんな素晴らしい体験を毎日していたなんて、と羨ましくて堪らなかった。  いや、これからは私も毎日こんな気分を味わうことができるんだ。私の、長い長い一日は、やっと終わり、新しい一日が始まったのだから!
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