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 程なくして、宴は開催された。  八百万の神が一同に会する宴は豪勢なもので、贅の尽くされた食事に、おそらくは高価であろうお酒が振る舞われた。更には、そのお酒を酌してくれるのは、絶世の美女揃いの天女たち。  僕は、余興のことなど忘れて、宴を楽しんでいた。  「これはこれは、若い神。飲んでいますかな?」  「これは先程の。ええ、飲んでいますとも」  「楽しそうで何よりですじゃ。ここは、豪華な食事に高価なお酒。更には、天女を抱き放題。まさに、桃源郷とはこのことですじゃ」  年老いた神様は、両手に天女を侍らせて、上機嫌のようでした。神様は色を好む――と言いますが、桃源郷ならぬ酒池肉林。神様とは、こんなにも特権階級の存在なのだと、僕は神になったことに改めて感謝した。  「それはそうと、そろそろ始まる頃じゃな」  「始まる? 例の余興ですか?」  「そうじゃ! 若い神は初めてでしたな。酒も楽しみじゃが、何といってもこの宴の余興がなくては話にならない。若い神も、気に入ってくれれば良いのじゃが……」  「それほどですか。楽しみだな」  それからしばらくして、司会らしき神様が余興の始まりを告げた。  「神様の皆さん、楽しんでますか?」  「うおー!」  神様たちが、一斉に声をあげた。  あまりの音量と熱に、会場が震えているようだった。  「結構。楽しんでおられるようで、何よりです。皆様には、日頃神様として様々な激務に携わり、大変感謝しております。今宵は、年に一度の宴の席。皆様には、恒例の余興を楽しんでいただきたいと思います」  「うおー!」  「いよ! 待ってました!」  「これがなければ、宴は始まらない」  「今年こそは――」  どこからともかく、様々なヤジが飛び交い、宴は最高潮に達していた。  「始まりますぞ、若い神」  そう言った、年老いた神様も興奮しているようで、お酒のせいでもあるが、顔が赤くなっていた。  「それでは、お待ちかねの余興を開催します!」  一体、どんな余興なのだろう。  僕も、年老いた神様と同じように、興奮していた。
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